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- 私福の一杯。
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多彩なラーメンは
”作りたい”の形。
自分らしく生きることを
ラーメンで表現する。
僕は飲食業をビジネスとしてではなく、
人生として捉えている人を応援する傾向にある。
もちろん、生きていく上でお金の話をしないというわけには、なかなかいかない。
でも、お金のためだったら、飲食業でなくても良い。
そこにはロマンがないように思うのだ。
「麺屋 夢源」という店は、そして提供されるラーメンは、店主・岩山雄樹さんが歩んでいきたい人生の形だった。
「夢という言葉が好きなんです。
初心を忘れず、だから夢こそ源( みなもと)、
という思いを込めて屋号を決めました」
岩山さんはラーメン店で10 年以上修業を積み、
2017 年8 月に「夢源」を開いた。
その修業先ではメニュー作りからオペレーション、マネージメントまで全て手掛けたというから、満を持しての開業だ。
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ラーメン店の開業を志したのは21 歳の頃。
すでに飲食業には惹かれ、
その世界に身を投じていたが、
まだ具体的にどんな業態にしたいというビジョンはなかったという。
「ラーメンは他の飲食と違って枠がないように思うんです。
自分らしいスタイルが作れるところが良い。
ラーメンは自由だと思う気持ちが膨らんでいくにつれて、徐々にラーメンという料理に惹かれたんです」
いざ、ラーメンの世界に入ってみると、
やればやるほど美味しくなる、
そしてどんな表現をしても自由なラーメンという存在と
その面白さに夢中になっていく。
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「夢源」はメニューが実に多様だ。
基本となる「夢源ら~めん」を筆頭に、
醤油、味噌があり、それらはピリ辛アレンジも用意。さらに魚介系を揃える。
「本当は一人で厨房を切り盛りしているので
メニューを増やすと効率的ではないんですが、
誰よりも自分が作りたいし、
どれも本当に自信があるので食べてほしいんです。
実際にいずれもお客様に喜んでもらっているので、これから止めるわけにはいかないですね」
魅力的すぎるメニューの数々に散々迷ってオーダーしたのが
「炒め野菜の夢源ら~めん」。
通常の「夢源ら~めん」にはボイルした野菜が盛り付けてあるが、
こちらはその野菜を炒めることで、
ヘルシー感を演出しつつも、
しっかりパンチを出すという一杯だ。
スープは弱火でじっくり炊いた豚骨出汁が土台となっていて、
豚骨ベースではありながらも鶏ガラを加えて奥行き出している。
スープは毎日取り切りで用い、フレッシュ感を保つ。
すっきりとした後味のあっさりスープで、ニンニクはほぼ効かせていない。
「女性にも気軽に食べてほしいのでニンニクはかなり控えめですが、
僕個人としては味わいにインパクトが出ますし、
やっぱりニンニクのフレーバーがラーメンに合いますから、
別添えで出すようにしています。
特に仕事などに支障がない方はぜひニンニク入りで楽しんでほしいですね」
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岩山さんのおすすめに従い、
ニンニクを入れて味わってみると、確かにコクが段違い。
炒めた野菜によるラードも加わり、スープがかなり力強くなった。
大ぶりなチャーシューも味付けが絶妙。
そしてこのスープに負けない特注の中細ストレート麺が良い仕事をしていた。
サクッと歯切れは良いが、咀嚼するとプリッと心地よい弾力がある。
このほどよいコシがラーメンを楽しくする。
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「開業して2 年が経ちますが、良いお客様に恵まれていますね。
店があるこのエリアは鹿児島市内の中心地からちょっと離れていて、
いわゆる都会の喧騒がありません。
ラーメン店がひしめいている激戦区というわけでもないので、
何のしがらみもなく、マイペースでやれる。
この場所だからこそ、自分で思い描いたラーメンが作れるんです」
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中心地から離れていても、
味がよければきっとお客様は来てくれる。
そう心で強く信じていても、
ラーメンを食べる人の絶対数が少ないエリアでの開業は勇気が必要だったはずだ。
それを乗り越え、現在の「夢源」はまさに脂がのった状態となった。
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ラーメンを食べ終え、何気なく壁を上のほうを見ると、大きな魚拓が貼ってあるのに気がついた。
釣人のところには岩山さんの名前が記されている。
「釣りが趣味なんですよ。魚を食べるのも好きですし、何よりリフレッシュになります。
ラーメンづくりと通じるものがあるなと思っているんです。
欲がないんでしょうね。
どんどん儲けて、店を増やしてという発想がありません。
それよりも、この店をコツコツ続けていきながら、家族を守り、
そして趣味の釣りも楽しめるようなバランスを大切にしていきたいんです」
自分の人生だからこそ、
真剣に考え抜いて辿り着いた岩山さんの仕事のスタイル。
自分らしくいられるからこそ、ラーメンにも全力投球できるのだ。
「自分ができる範囲で最大限、
お客様に喜んでもらうことだけを考えています。
当たり前を丁寧にしたいんです」
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山田祐一郎 やまだ ゆういちろう
福岡県・宗像市出身。日本で唯一(※本人調べ)の
ヌードルライターとして活躍中。実家は製麺工房で、
これまでに食した麺との縁は数知れず。
九州を中心に、各地の麺を食べ歩き原稿を執筆。
モットーは”1日1麺”。著書に『うどんのはなし 福岡』、
『ヌードルライター秘蔵の一杯 福岡』。
http://ii-kiji.com